
昨年秋から今にいたるまで、あらゆるアニメ雑誌は『鋼の錬金術師』を表紙や付録に取り上げ、大特集を組んでいた。未見の方も、興味は持っていたのではないか?アニメ本来のユーザーである中高生の女子層を中心になぜブームになったか、その分析は野暮かもしれないが、確実に言えるのは本作が「痛み」を真っ正面から描いたものだということだ。主人公のエルリック兄弟は、いずれも重大な欠損がある。常に感じているはずの心と身体の痛みが、錬成術の中心に位置している「等価交換」という言葉の背負ったごまかしのない価値観と響きあう。政治家や大企業など、大人がまともに痛みと向き合っていない現在だからこそ、この物語はリアリティを獲得しているのだ。【アニメ評論家・氷川竜介】